放浪哲学

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11年かけて130カ国15万㌔の自転車ひとり旅 …自転車による世界一周の日本人記録を塗り替えて、2009年に植村直己冒険賞を受賞した中西大輔氏の旅の全貌

やろうと決めて努力すれば、できないことは何もない。やろうとしなければ、チャンスは逃げていく。

「自分の体力で自転車世界一周ができるか」。
11年前、こんな思いにかられて、6年間の住宅メーカー勤めでためた600万円を元手に、愛車にまたがって旅に出た。

日本を拠点にした場合の「自転車世界一周」の定義は、「大西洋を挟んで2大陸以上を走破し、赤道を越えること」。

3年半ほどかけて60ぐらいの国を回れば、と思っていたが、行きたくなったところを走っているうち、訪れた国は130か国に。

走行距離は地球4週分に近い15万1849kmになった。
南極以外の大陸はすべて走った。タイヤ82本、チェーン15本をつぶし、ペダルは5回交換した。

「世界一周」を果たした日本人は約70人いるが、117か国、11万6780kmというこれまでの通過国数、走行距離の記録を大きく塗り替えた。

ブラジルではサッカーの王様ペレさん、米国ではカーター元大統領に、アポなしで面会した。

「頑張って旅を続けて」と励まされた。アフリカ南部のナミブ砂漠では、面会したくないハイエナが2頭現れた。

料理用ナイフを握りしめ、野宿のテントの中でじっとしていたが、「立ち去った後も不安だった」。

日本アドベンチャー・サイクリストクラブの「地球体験ぺダリアン大賞」を受賞。

苦楽を共にした愛車とゴールに決めた授賞式に臨み日焼けした顔に笑みを浮かべた。

やろうと決めて努力すれば、できないことは何もない。やろうとしなければ、チャンスは逃げていく。

世界一のものを求めて、単身、自転車で世界を走破した青年の手記。

本書の読者は、自分がなしえない前人未到の旅を疑似体験しながらヒューマニズムに触れ、人によっては「自分探しの旅」に出る。

11年かけて130カ国15万キロの自転車世界一周一人旅というのは、世界のいろいろな旅の記録の中でもなかなか見ない。

寂寥とした中での熱い出会いを素直に語り、静かでありながら力強い小説を読むような感動を読者は覚えるであろう。

全編がほんわりヒューマンだが、旅そのものは命がけ。一つひとつが豊饒なドラマそのものである。

さまざまなエピソードをベースにして、著者は内側を見つめ、じわじわと自分の思考を深める。

それがこの手記に表れてくる。自分の体を必死に動かし、いくつもの「へこたれ」や「恐れ」、「闘志」、「耐え」、「挑み」の感情を持った上で出会った風景の数々を読者は感じる。

とにかくこれは、日本の青年が挑んだ、繊細かつ逞しい大冒険記だ。

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